女性の貧困が多いのはなぜ?その理由と支援方法を紹介

女性の貧困が多いのはなぜ?その理由と支援方法を紹介


皆さんは「貧困」という言葉を聞くと、どんなイメージを思い浮かべますか。
実はこの「貧困」、今、途上国だけでなく先進国でも深刻化しています。中でも、社会問題にもなっているのが女性の貧困です。

今回はコロナ禍以降、新聞やテレビで見聞きする機会が増えた貧困について、中でも女性の貧困を中心に解説していきます。
 

貧困とは

貧困には、下記のような2種類があると言われています。

  • 絶対的貧困
  • 相対的貧困

それぞれの違いを見ていきましょう。


絶対的貧困とは

絶対的貧困とは、生きる上で必要最低限の生活水準が満たされていない状態を言います。
特に発展途上国に多くみられるような、食べ物や飲み水がない、雨風をしのげる家もないといった状態が絶対的貧困です。
絶対的貧困は病気や死などに直接結びついてしまうことも多く、深刻な社会問題の一つとされています。

相対的貧困とは

相対的貧困とは、その国の生活や文化水準と比較して困窮した状態を言います。
具体的には世帯所得が、その国の等価可処分所得の中央値に達していない世帯をさします。

2018年における、日本の等価可処分所得の中央値は254万円でした。(※1)
よって世帯所得が127万円未満の世帯は、相対的貧困家庭ということになります。
(※1)国民生活基礎調査|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

相対的貧困家庭の多くでは日々の食費や光熱費などを切り詰めて生活しながらも、趣味や子どもの教育費にお金を使う余裕はほとんどありません。また、将来においても改善する期待を持つことができないと言われています。

実はこの相対的貧困は、途上国だけでなく先進国でも大きな問題になっています。日本では20歳〜64歳の一人暮らしをしている女性の3人に1人が相対的貧困状態だと言われています。

 

女性の貧困

なぜ貧困は女性に多いのでしょうか。

ここからは女性の貧困について、現状や理由、そして貧困に陥ることになってしまったきっかけについて説明します。

 

女性の貧困について、その現状

特に女性に貧困が多い背景として、男女の平均給与格差が考えられます。

令和3年度の平均給与は男性が545万円であるのに対して、女性の平均給与は302万円でした。
給与所得の給与段階分布を見ると、男性は年間給与額400万円超500万円以下が最も多く537万人(構成比17.5%)であるのに対し、女性は年間給与額100万円超200万円以下が最も多く497万人(構成比22.5%)です。(※2)
(※2)令和3年分 民間給与実態統計調査|国税庁 (nta.go.jp)

この給与格差は、「非正規雇用で働く女性が多いこと」「管理職になる女性が少なく、昇給の幅が小さいこと」などが理由だと考えられます。
結婚や出産を機に、非正規雇用にならざるをえない環境にいる女性も少なくありません。管理職についても同様であり、女性の収入が低いことは個人の努力や能力だけの問題では決してありません。

また未成年の子どもを育てているシングルマザーは勤め先の確保が難しく、貧困に陥ってしまうケースが多くあります。
令和3年度の全国ひとり親世帯等調査結果報告によると、離婚や死別など何かしらの理由でひとり親になった平均年齢はシングルマザーが34.4歳、この方々が育てている子どもの末っ子の年齢が4.6歳です(※3)
(※3)令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告 

まだまだ手のかかる小学校に入学前の子どもを育てるための時間が必要であること、そのために正規雇用の仕事に就きづらい環境であることは想像に難くありません。

このような背景から、多くのシングルマザーは非正規雇用という働き方しか選択肢がなく、自力で貧困から抜け出すことは簡単なことではないといえるのです。

そればかりか過労から体を壊してしまえば、即収入は途絶えてしまい日常生活を維持する事さえ困難になってしまいます。 

 

理由

ここからは「非正規雇用で働く女性が多く」「管理職になる女性が少ない」理由について見ていきます。

その理由は、男性が稼ぎ、女性は主に家事育児を行うことを標準的な家庭とした労働や社会保障のあり方にあるのではないでしょうか。
戦後の日本では男性が稼ぎ、未婚女性は父親に、既婚女性は夫に扶養されている姿がスタンダードだとされていました。そのため女性自らが働き経済的に自立することが想定されておらず、その前提にたって設計された社会保障制度が、今も続いてしまっていることが原因だと考えられます。


女性が貧困に陥るきっかけ

次に、女性が貧困に陥るきっかけとその特徴を見ていきましょう。

上記でも説明してきたように女性が貧困に陥るきっかけとしてまず考えられるのは、非正規雇用で働く人が多いことです。大学や短大、専門学校など教育機関を卒業した後も、正社員ではなく非正規雇用で働く女性が多くいます。

また一度は正社員として働いたとしても、結婚や出産を機に非正規雇用になる女性も少なくありません。

もう一つ、貧困に陥るきっかけとして考えられるのがシングルマザーです。
子どもの教育費や自分を含めた家族の病気・親の介護など、年齢性別に関わらず誰もが貧困に陥る可能性はあります。
しかしながら配偶者と二馬力で収入を得ることができれば、貧困を回避できる可能性が高まります。

しかしそれは逆説的に言えば、離婚や死別などシングルマザーになった場合、貧困に陥るリスクが高まるということを表します。特に結婚・出産を機に非正規雇用になっていた場合は、貧困に陥ってしまう可能性がさらに高まります。

誰もが、「特に女性が」貧困に陥ってしまうことは、決して特別なことではないのです。

 

 

支援

女性の貧困に関して、女性支援団体や行政などが子育てや生活・就業・経済などさまざまな側面からの支援活動をすでに行っています。

特にシングルマザーへの支援は手厚く、キャリアや就職支援として「就業時間が短い」「フレックス制度を導入している」「託児所が完備されている」など、仕事と家事・育児の両立がしやすい就職先を見つけてくれる制度が用意されています。

また生活や育児などについて、24時間365日電話やメールで無料相談をすることができ、内容によっては解決まで導いてくれる自治体もあります。

 

ここからは、行政が実際に行っている支援を紹介します。

 

就職やキャリア支援

子育てをしながら就職を希望する女性を対象に

  • 託児所がある
  • 在宅勤務ができる
  • 勤務時間が短い

など、家事と育児の両立がしやすい就職先を見つけてくれる相談窓口を設置している自治体があります。

このような相談窓口はマザーズハローワークやマザーズコーナーなどの名称で運営され、子ども連れでも気軽に来所できるよう整備されています。

 

経済的支援

行政では児童扶養手当の支給だけでなく、母子父子寡婦福祉資金として、以下の資金が挙げられます。

  • 子の修学資金
  • 技能習得資金
  • 就職支度資金
  • 医療介護資金
  • 生活資金
  • 住宅資金
  • 転居資金

資金の支援内容は自治体によって異なる場合があるため、必要に応じて問い合わせることをおすすめします。

 

心身のケアや健康の支援

仕事と子育ての両立で心身ともに疲れていたり、将来の不安を感じていたりするシングルマザーも少なくありません。
このような方のために、ひとり親家庭への相談窓口や育児相談窓口が用意されています。

誰かに聞いてもらうだけで心が軽くなることもあります。
「今は大丈夫」という方でも、このような窓口があることは覚えておきましょう。

 

まとめ

本日は女性の貧困について、ご紹介しました。

女性が貧困に陥ってしまうことは、決して他人事ではありません。そして貧困に陥ってしまう理由は個人の問題だけでなく、男性が稼ぎ、女性が家事育児を担うことを前提とした考え方や社会保障のあり方にも原因があると考えられます。

今の時代にあった社会保障制度の変革について、また貧困問題を解決するための支援・制度について考えるきっかけとしていただければ幸いです。

 

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