寄付金に関わる税金にはどんな種類があるの?

寄付金に関わる税金にはどんな種類があるの?


寄付を行った場合、確定申告を行うことによって所得税や復興特別所得税が還付されるケースがあることはよく知られています。

一方で寄付金を贈った場合であっても、寄付金の使用用途や送り先などによっては課税の対象になることがあるのはあまり知られていません。

今回は、寄付金を贈った場合にかかる税金について説明します。

 

 

寄付金を贈った場合にかかる税金は?

寄付金を贈った場合にかかる税金は、贈る相手が個人であるか法人であるかによって変わります。それぞれの場合についてみていきましょう。
 

贈る相手が個人の場合

寄付金を贈る贈与側(個人)が、寄付金を受け取る受贈側(個人)に贈与を行った場合、現行の税法では贈与側に税金がかけられることはありません。

誰を贈与税の納税義務者とするかは、相続税の課税方式によって決まります。

相続税の課税方式は

  • 遺産課税方式
  • 遺産取得課税方式

の2つに分かれています。

日本の相続税法は、遺産取得課税方式が採用されています。

これは相続または遺贈があった場合、財産を受け取る受贈側に対して、相続税がかけられるルールであり贈与税についても同じです。

この税法を根拠とし、個人間の贈与では、贈与側(個人)は課税対象にならず、受贈側に贈与税がかかります。

 

贈る相手が法人の場合

寄付金を贈る贈与側(個人)が法人へ贈与を行う場合は、受贈側(法人)の種類によって、受贈側だけでなく贈与側にも税金がかけられることがあります。

ここでは贈与側(個人)が

  • 営利企業に対して
  • 国や地方公共団体に対して
  • 公益法人に対して

贈与した場合について、それぞれ説明します。

 

営利企業に対して贈与した場合

贈与側(個人)から贈与を受け取った営利企業は、受け取った財産を受贈益(特別利益)として、会計処理します。

その際、受贈益は贈与された財産の時価で計上するのが原則です。

贈与を受け取ると受け取った側の営利企業は当然、利益が増えます。その分、法人税の負担が増えることになります。

贈与側(個人)から現金が営利企業へと贈与されたのであれば、贈与側に税金がかかることはありません。

しかしながら現金ではなく土地や物品などを贈与する場合には、贈与側にも税金がかけられることがあります。なぜなら土地や物品の贈与は税務上、贈与ではなく「みなし譲渡」に該当し時価で譲渡(売却)したと考えられるからです。

そのため贈与した土地や一部の物品の時価が、取得価格-減価償却費、を上回る場合は、その差額が譲渡所得として所得税と住民税の課税対象となるため注意が必要です。

 

みなし譲渡とは資産を無償、もしくは低価格で譲渡したにもかかわらず時価で譲渡したとみなして課税される税制上の規定をいいます。
みなし譲渡には、譲渡する相手によって、みなし譲渡と判断される条件や課税される税金が異なるという特徴があります。

みなし譲渡として、所得税及び住民税が課税されるケースは以下の通りです。

  • 個人が法人に資産を無償で譲渡した場合
  • 個人が法人に資産を低価格で譲渡した場合
  • 遺産を限定承認した場合

限定承認とは被相続人である亡くなった方の資産状況がよく分からないという場合に、相続人がプラスの財産の範囲内でのみ借金などを引き受ける相続方法をさします。

個人が1年の間に得た利益には、所得税及び住民税が課税されます。

上述した3つのケースでは資産が時価で譲渡されたとみなされ、実際に譲渡による金銭等が無かったとしても所得税及び住民税の課税対象になります。

消費税等は法人個人に関わらず、課税事業者が事業としての資産の譲渡や貸付、サービスの提供を受けたときに課税される税金です。

みなし譲渡として、消費税等が課税されるのは以下のケースです。

  • 法人が購入した資産を役員に無償で譲渡した場合
  • 法人が購入した資産を役員に低価格で譲渡した場合

 

 

国や地方公共団体に対して寄付を行った場合

贈与側(個人)が国や地方公共団体に対して寄付を行った場合は、課税の対象になることはありません。

また贈与側(個人)は確定申告を行うことによって、寄付金控除を受けることができます。寄付金による控除については、過去の記事でもいくつかご紹介していますので参考になさってください。

 

公益法人に対して寄付を行った場合

贈与側(個人)が公益法人に対して寄付を行った場合は、「寄付した日から2年以内にその公益法人が公益を目的とする事業に寄付金を使用する」など一定の要件に該当すれば国税庁長官の承認を受けるための申請書を提出することができます。

国税庁長官の承認を受けることができれば、課税対象にはなりません。

しかしながら申請書を出した後であっても、何かしらの理由で「一定の要件」から外れてしまった場合には、国税庁長官の許可が取り消されてしまいます。

許可が取り消されてしまった場合には、贈与側(個人)および贈与を受けた公益法人も課税対象になります。

 

 

寄付金を受け取った場合にかかる税金は?

続いて、寄付金を受け取った場合にかかる税金について説明します。

寄付を受け取った場合には、受け取った側(受贈側)が経済的利益を受けることになり課税対象になることがあります。

例えば個人が寄付金を受け取った場合には、贈与税もしくは所得税・住民税がかけられます。法人が寄付金を受け取った場合は、基本的には法人税がかけられます。

この際、法人であっても公益法人の認定を受けた法人、並びに非営利型の社団・財団法人の収益事業以外の事業に属する寄付金は非課税となります。

ここからは寄付金を個人から受け取った場合、法人から受け取った場合について詳しく説明します。

 

個人から受け取った場合

個人から寄付を受け取った場合、寄付を受け取った側(受贈側)の属性により

  • 常に贈与税の納税義務者になる
  • 特定の場合にのみ、贈与税の納税義務者になる
  • 常に贈与税の納税義務者にはならない

の3つに分かれます。それぞれについて補足します。

 

常に贈与税の納税義務者になる

個人から、個人もしくは人格のない社団などが寄付を受け取った場合は、常に贈与税の納税義務者となります。

人格のない社団などとはPTAや町内会、研究会など一定の目的を持つものが集まった、法人格を持たない団体をさします。

 

特定の場合にのみ、贈与税の納税義務者になる

持分の定めのない法人が、特定の場合にのみ贈与税の納税義務者になります。

持分の定めのない法人とは一般社団法人や一般財団法人、学校法人、社会福祉法人などです。

これらの法人に対して贈与があった場合、贈与側の親族や親族と特定の関係にある者の贈与税の負担が不当に減少する場合、持分の定めのない法人であっても個人として見なされ贈与税の対象となります。

 

常に贈与税の納税義務者にはならない

贈与税の申告・納税の対象となるのは個人のみです。

そのため株式会社や合名会社、合資会社などは常に贈与税の納税義務者になることはありません。

 

贈与税の仕組み

贈与税とは年間110万円を超える財産を譲り受けた場合、受け取った側(受贈側)が負担する税金のことです。

その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産を合計し、その合計金額から基礎控除額である110万円を差し引いた残額に贈与税の税率をかけ起算します。

ただし以下の場合は、贈与税の対象にはなりません。

  • 扶養義務者相互間での生活費や教育費など
  • 通常の見舞金、香典、贈答
  • 法人からの贈与によって財産を取得した場合、など。

贈与税とは、個人間で行われた贈与にかかる税金です。

そのため法人から行われた贈与にたいして贈与税がかけられることはありませんが、法人と個人との関係によっては贈与・授与があった場合、別の税がかけられることもありますのでご注意ください。

 

法人から受け取った場合

個人が法人から贈与を受け取った場合は、その関係性によりかけられる税金が変わります。

例えば、受贈側(個人)が、その法人の従業員だった場合は賞与として取り扱われます。賞与は毎月の給与と同じく給与所得になるため所得税と住民税の対象になります。

また法人が従業員ではない第三者である個人に贈与を行った場合、受贈側(個人)の一次所得となるため、こちらも所得税と住民税の課税対象になります。

 

 

まとめ

今回は、寄付金にかかわる税金について紹介しました。

寄付とは個人や企業が自らの意思に基づき、慈善目的のために財産や物品を無償で譲渡することです。贈与とは、贈与する側(贈与側)と受け取る側(受贈側)の意思が合致して成立する一種の契約をさします。

寄付と贈与では、無償で財産を譲渡する目的とその対象において異なります。

寄付は不課税であり、支払うべき税金はありません。

一方で贈与は課税対象になります。

寄付として良かれと思って行ったものであっても、その目的と対象によっては贈与とみなされ自分にも相手にも税金がかかることがあります。

寄付を行う際は、ぜひご留意ください。

 

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