生活に困窮する人を支援する団体のお仕事って?どんな活動をしているの?その取り組みをご紹介します。
みなさんは生活困窮者という言葉を知っていますか?ここ数年はテレビや新聞、ネットニュースなどでも多く取り上げられており、一度は見聞きしたことがあるかもしれません。
2020年のコロナ感染は多くの企業や飲食店にダメージを与え、それに伴った「生活困窮者の増加」が日本でも問題となっています。
さらにウクライナ侵攻の影響による小麦などの原材料の高騰、原油や円安による物流コストの上昇が「物価高騰」に繋がり、日本の生活困窮者にさらなる追い討ちをかけています。
今回の記事では、生活困窮者の現状や抱える悩み、国や団体がどういった支援をおこなうのかなど、生活困窮者について詳しく解説したいと思います。
目次
1.生活困窮者の困りごととは
2.生活困窮者を支援する団体
3.団体の活動内容
・自治体の活動内容
・民間団体の活動内容
4.支援活動に携わるには
5.まとめ
1. 生活困窮者の困りごととは
はじめに生活困窮者の定義、具体的にどのような人が対象となるのか、改めて理解しておきます。
生活困窮者の定義
厚生労働省が公表する「生活困窮者自立支援法(第三条)」によると、
生活困窮者の定義は「就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情により、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者」です。
簡略すると「仕事や家庭などのさまざまな理由で、経済的・社会的に自立して生活することが困難な人」を指します。
生活困窮者に該当する例として、次のようなケースが挙げられます。
・十分な食事が摂れない
・働きたくても働けない
・住む場所がない
・必要最低限の生活用品がない(買えない)
・医療が受けられない、など
また生活に困窮することで、
「子どもの学費が払えない」
「家族分を含め、税金を滞納している」
「家を退去しなければならない」など、
本人以外にも影響を及ぼす可能性があります。
生活困窮者の現状
生活困窮者は「貧困」と呼ばれるケースもあります。貧困とは「貧しくて生活に困っている状態」のことで、生活困窮者とはほぼ同じ意味合いです。
貧困と聞いて、日本はあまり馴染みがないように感じる方がいるかもしれません。
しかし、日本における貧困問題は、年々、深刻化しています。 2015年の「相対的貧困率」(日本の貧困線を下回る世帯の割合)は、15.7%となっています。
相対的貧困のラインはその国ごとの生活水準から定められており、日本における相対的貧困ラインは、2018年時点で「127万円※」。6世帯に1世帯が、年収127万円で生活をしていることになります。
日本では、単身・一人親世帯の増加(三世代世帯の減少)、世帯主の高齢化などが、相対的貧困率を高めている理由として挙げられています。厚生労働省が公表した「国民生活基礎調査」によると、2021年6月時点での単身世帯は約1,529万世帯(過去最高)で、2019年より0.7%増加。
さらに高齢者世帯に関しては、約1506万世帯で2019年より0.3%増加しています。
※2019年 国民生活基礎調査の概況(厚生労働省)より
生活困窮した状況に陥ることで、さまざま障害が発生します。たとえば、生活困窮者が就職活動しようにも「就活するための費用」が用意できず、正規雇用など条件の良い職場で働くことができないケースも多いです。
近年では、貧困家庭の若者における非正規雇用やニートの増加も問題視されています。
2. 生活困窮者を支援する団体
生活困窮者を支援する方法は、大きく2つに分類できます。
2. 民間団体による支援 |
自治体による支援
一つは自治体による支援です。
自治体とは「都道府県や市区町村を取りまとめる行政機関」です。地方自治体や地方公共団体とも呼ばれ、たとえば市役所・区役所・町村役場・都道府県庁などがそれにあたります。
平成27年(2015年)に執行された「生活困窮者自立支援法」により、全国の自治体に相談窓口を設置することが義務付けられました。
「働きたくても働けない」
「住む場所がない」
「社会に出るのが不安」など
年齢や性別を問わず、生活に関するさまざまな相談を専門の指導員から受けることができます。
令和4年4月1日時点で、各自治体が設置している自立相談支援窓口は全国に1,388箇所あります。
※生活困窮者自立支援制度の現状について(厚生労働省)
民間団体による支援
もう一つは「民間団体」による支援です。
民間団体とは「民間の立場で、ある特定の社会的課題の解決を目的に結成された集団」です。一般的にはNPOや社団法人、学校法人などの非営利組織がそれにあたりますが、ときに営利目的に事業を行う企業や法人が民間団体と呼ばれるケースもあります。
生活困窮者を対象とした民間団体の取り組みは、おもに以下2つです。
● 行政機関にできないことをする
● 行政との連携(ネットワーク構築)を図る
育児の関係で思うように働けないシングルマザー、ホームレス生活せざるを得ない独り身の高齢者など、さまざまな悩みを抱えた生活困窮者が存在します。行政機関だけでは、すべての生活困窮者に手が回せないのが実情と言えます。
たとえばシングルマザーの女性が「食の支援を受けたい」となった場合は、自治体ではなく民間団体
がおこなう「フードバンク」を利用します。
フードバンクとは「企業や個人から余った食品を通じて、生活困窮者を支援する活動」です。近年はコロナ渦の影響から、フードバンクを利用する方が急増しています。
また民間の団体は、行政からの支援や助成金を受けたり、ネットワーク構築を促進することで、生活困窮者に向けた活動をより効率化させることが可能です。
3. 団体の活動内容
では実際に生活困窮者の支援活動には、具体的にどういったものがあるのでしょうか。
自治体と民間団体で、それぞれの取り組みを見ていきます。
自治体(地方自治体)の活動内容
自治体のおもな役割は「地域全体の活性化」です。自治体は、私たちが支払う税金を使って、地域のために活動します。
したがってNPOなどの民間組織とは異なり、公益性のある結果を目指すために、活動は「公正」かつ「公平」である必要があります。
下記は生活困窮者自立支援法に基づいて各都道府県の自治体が実施する支援の一例です。支援事業は「必須事業」と「任意事業」に細かく分類されています。
必須事業 | 自立相談支援 | 相談支援員による自立のための情報提供、助言で支援 |
住居確保給付金の支給 | 就労に向けた活動を条件に、一定期間の補助(家賃等)を支給 | |
任意事業 | 就労準備支援 | 就労意欲の喚起のための動機づけ、基礎能力の形成など、社会生活の自立を根本的部分から支援 |
一時生活支援 | 生活困窮者に対して一定期間の宿泊場所や衣食の供与を行い、自立を支援 | |
家計改善支援 | 家計に関する相談、家計管理に関する指導などの支援 | |
子どもの学習・生活支援 | 生活困窮世帯の子どもに向けた支援(日常的な生活習慣の習得、高校中退の防止など) |
必須事業は各自治体で取り組まれていますが、任意事業は各自治体で取り組みに違いがあります。
さらにホームレス自立支援においても、同じく各都道府県の自治体にて施策がとり行われています。
東京都 | 自立支援システムの運営、保健及び医療の確保、緊急援助及び生活保護など、合計9つの施策 >>東京都福祉保健局より参照 |
神奈川県 | 安定した居住場所の確保、就業機会の確保、ホームレスとなることを未然に防止するための対応など、8つの施策 >>神奈川県ホームレスの自立支援等に関する実施計画より参照 |
愛知県 | 生活環境の改善、安全の確保、民間団体との連携など、12の課題とそれに対する施策 >>愛知県ホームレス自立支援施策等実施計画より参照 |
大阪府 | 巡回相談指導事業による伴走型支援、ホームレスの人権擁護など、10の策 >>大阪府ホームレスの自立の支援等に関する実施計画より参照 |
厚生労働省が1年ごとに行う「ホームレスの実態に関する全国調査」を見ると、全国で確認できたホームレスが減少傾向にあることもわかっています。
平成27年:6,541人 平成28年:6,235人 平成29年:5,534人 平成30年:4,977人 平成31年:4,555人 令和2年:3,992人 令和3年:3,824人 令和4年:3,448人 >>厚生労働省の「ホームレスの実態に関する全国調査」より参照 |
そのほか、自治体では、2020年にはコロナ感染による「新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援」や、物価高騰による「電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援」なども実施しています。
民間団体の活動内容
続いて、民間団体の生活困窮者に対する取り組みを見ていきます。
民間団体の役割は「国・行政が手を回せない取り組みを行うこと」です。運営や活動は、おもに寄付金から賄われています。
民間団体では、かならずしも公益性や公正・公平を重視する必要はなく、理念や活動そのものを重視します。とはいえ「何でもアリ」に取り組んでいても、課題解決には繋がりません。
生活困窮者支援を行うNPOや社団法人などの取り組みを5つご紹介します。
1. 炊き出し
炊き出しとは「生活困窮した状況下にある人を対象に、料理やお弁当、そのほか食品を無償提供する行為」です。
おもに炊き出し支援は、都市公園、河川、道路、施設等で生活する「路上生活者」を支援するNPOがおこなっています。
また炊き出しを行う際に、夜回りのパトロールや医療・生活用品の寄付なども並行して実施する場合もあります。
2. 生活相談
困窮した状況下に置かれた方々は、本来は利用できる制度や情報にアクセスできないことも少なくありません。生活相談支援は、生活困窮者にとって欠かせない存在の一つです。
生活相談支援では、自身が受けられる制度・制度の利用方法の相談、生活保護申請に同行、また日常生活に関するカウンセリングが受けられます。2020年のコロナ感染の影響から初めて生活困窮に陥った数多くの方も、この生活相談を利用されています。
3. 就労支援
就労支援では「働くための基盤づくり」に重きを置いています。たとえば、コミュニケーション能力の習得、就労体験、就労機会の提供、地域活動などです。
就労支援では、社会への恐怖心がある方に向けた「就労準備支援」、一般就労を目指す長期的な「就労訓練支援」などに分類して取り組む団体もあります。
4. 住居支援
生活困窮者の中には、すでに住む場所がない人だけでなく、住む場所を見つけることすらできない状態の人も存在します。たとえば一人身で連帯保証人がいない場合、賃貸会社で部屋を借りることもできません。
こうした困窮者を対象に、連帯保証人の引き受けやアパート訪問活動、無料低額宿泊所の提供で支援します。
住居支援は、NPOが国や自治体と連携して行うケースも多いです。
5. セミナー・広報・啓発
生活困窮者の現状をより多くの人に知ってもらうための啓発活動、生活困窮者の方を支援する指導スタッフの育成なども、継続した支援を行うための大切な役割です。
こうした広告制作費やセミナーの開催日も、企業・個人などから募った寄付金で賄われています。
4. 支援活動に携わるには
生活困窮者の現状、団体の活動内容を見てきましたが、「支援活動に携わりたい」と考えている方も少なくないでしょう。実際に、個人でもさまざま方法から生活困窮者を支援することができます。
そこで、私たちができる「5つの支援方法」をご紹介したいと思います。
お金の寄付
支援方法として最も代表的なのが「お金の寄付」です。団体ホームページからの振込、ネット募金、コンビニ募金、クラウドファンディング、ふるさと納税など、現在はさまざまな形で寄付できます。
お金の寄付によるメリットは、支援された団体が「柔軟に活用できる」点です。NPOなどの民間団体の活動は寄付金で支えられていることが多く、金銭ならその時々の状況にあった使い方ができます。なお金銭寄付の場合は、直接そのお金が生活困窮者の手に渡るのではなく、団体の活動内容を通じて支援する流れです。
食料の寄付
食品を寄付することもできます。食品の寄付は「フードバンク団体」を利用するのが一般的です。
フードバンクとは、まだ食べられるのに廃棄されてしまう食品を「企業」や「個人」などから募り、生活に困窮する人たちへ届ける活動です。2022年時点で、日本のフードバンク団体は約150あります。
近年は日本でも貧困、食品ロスが問題となっており、フードバンク団体は増加傾向にあります。
もし食品をフードバンク団体に送る場合は、個人で受け付けできる食品、賞味期限などに注意しましょう。冷凍食品や生鮮食品は、企業しか受け付けない団体もあります。
賞味期限については1ヶ月以上〜が望ましいです。
物品の寄贈
物品を寄贈して、生活困窮者を支援することもできます。物品とは、たとえば下記のようなものです。
・衣料品
洋服、スニーカー、ベルト、帽子などを寄付できます。路上生活者の支援を主とする団体では、男性用の衣服が一般的です。また衣料品の状態によっては受付できない場合もあります。
・生活用品
未使用のタオル類、アメニティ用品(歯ブラシ、生理用品など)、防寒グッズ、毛布類(冬季のみ)を寄付できます。ただし、寄付できる生活用品は「未使用のみ」です。
・金券
使わない金券も寄付できます。寄付された商品券や旅行券などは金券ショップで換金し、支援団体の活動費などで活用します。
・切手・ハガキ
切手やハガキで寄付できる団体もあります。使用済みでも可能です。
同じく使用済み切手や書き損じハガキを換金して、支援団体の活動費などで活用します。
また当サイト「モノドネ」を使うと、ブランド品、家電、おもちゃなどをお金に換えて、好きな団体に寄付できま
す。寄付できる対象の品がない場合は、ぜひご活用ください。
>>モノドネの仕組み
購入で支援
民間団体が販売する商品を購入、サービスを利用することも、生活困窮者の支援になります。最近では発展途上国の人びとの生活支援につながる、「フェアトレード商品」を販売する企業も増えてきました。
フェアトレードとは「公平な取引」を意味します。安い賃金で食品を作らされている人びとに公平性を与えることを目的とした考えです。
日本の生活困窮者に向けたフェアトレード商品は少ないですが、団体が提供するプライベート商品の購入・サービスの利用をすると、その代金の数パーセントが寄付につながる場合もあります。
取り組み団体の例として、ホームレスや生活困窮者の支援をおこなう認定NPO法人「抱樸」がその一つです。抱樸は、北九州を拠点に生活困窮者や社会からの孤立状態にある人びとの生活再建を支援する民間団体。
現在、抱樸では独自のネットショップ「抱樸ストア」を運営し、オリジナル商品や書籍など販売中。抱樸ストアの商品を購入すると、その売り上げの一部が団体の活動資金に使われます。
そして活動継続を支えることは、結果的に生活困窮者の支援へと繋がります。
「何を寄付していいか分からない…」
このような場合は、団体の公式ホームページからネットショップを確認し、商品の購入にて支援するのも一つでしょう。
ボランティア協力
団体の取り組みにボランティアとして参加することも、生活困窮者に対する支援の一環です。
ボランティアの具体的な活動内容、参加できる条件は団体によって異なります。
下記は、生活困窮者支援に関するボランティアの一例です。
・炊き出しのサポート
・お弁当づくり
・夜回り
・ホームレス自立支援の相談員
最近は「プロボノ」への注目も集まっています。プロボノとは「社会的・公共的な目的のために、自らのスキルや専門知識を活かして取り組む社会貢献活動」です。ボランティアとの大きな違いは「スキル・経験の必要性」です。
従来のボランティアは、団体の取り組みに対して専門的な知識や経験がなくても参加できます。
それに対してプロボノは、これまでの仕事で習得した「スキル」や「経験」を、団体・企業・支援が必要な人のために使います。
〈プロボノの一例〉
・税理士の場合・・・会計業務、税務関係のアドバイス
・IT企業の正社員の場合・・・データ資料やホームページの作成、マーケティング業務
・美容師の場合・・・ヘアカット(ホームレス支援として無料ヘアカット)、など
ボランティア同様に金銭的な報酬はありませんが、自身のスキルの向上、生産性のある社会貢献ができる、人との繋がりが増えるなどのメリットを得られます。
ボランティアやプロボノに関しては、過去記事で詳しく解説しています。
5.まとめ
今回は生活困窮者について詳しく紹介しました。
本内容のおさらいです。
生活困窮者とは「仕事や家庭などのさまざまな理由で、経済的・社会的に自立して生活することが困難な人」を指します。近年では日本でも生活困窮者や貧困が問題となっており、それに対する行政や団体の取り組みが注目されています。
私たち個人でも生活困窮者を支援することができます。最も一般的なのは金銭の寄付ですが、フードバンク団体への食品の寄付、NPO団体への物品寄付、ボランティアやプロボノの参加でも支援に繋がります。
また生活困窮者やそれに近いと感じる方が身近にいる場合は、当記事でも紹介している「生活困窮者自立支援」や「民間団体の存在」を共有するのも一つです。生活困窮するなかで、こうした情報すら得られない状況も十分に考えられるためです。
募金、食品寄付、SNSの拡散など、まずは自分のできる範囲から社会貢献を始めてみてはいかがでしょうか。
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